控訴理由書
令和8年(行コ)第80号弁護士会鼎立解消手続等請求控訴事件
原告 神山美智子他5名
被告 第一東京弁護士会他3名
控訴理由書
令和8年4月15日
東京高等裁判所 第20民事部 御中
控訴人兼控訴人ら訴訟代理人
弁 護 士 斎 藤 誠
弁 護 士 道 本 幸 伸
控訴理由の骨子
1 分断思想の強制による人権と期待権の侵害(国賠請求)
原判決は、「・・『會記』は被告一弁設立の経緯ないし理念が記載されたものにすぎず(甲42の2)、原告らの個人的な権利利益を侵害するものとは認められない」とする(p22イ)。しかし被控訴人一弁会長は現在でも「會記」を会則集に登載したり宣誓させたりしてその遵守を会員に要求する。会則違反(22条)は懲戒の対象であるから(56条)会員は「會記」に従わざるをえない。「會記」は会員の人格の優劣により弁護士会は併存すべきとして合併を否定する思想である。會記の強制によって、控訴人一弁会員は、鼎立を批判したり、合併に賛同を表明したりして合併を実現する自由を奪われている(憲法19条14条13条21条/法89条2項)。東弁二弁会員は、人格が劣るとの内容を公表されてその人格を侮辱され、さらに一弁会員が鼎立思想に束縛されるために、合併の実現を諦めさせられている(法89条2項)。會記思想の強制によって、控訴人らは人格・人権侵害による精神的損害と合併実現によって得られる利益(期待権)の損害を蒙っている。
原判決は、国家賠償請求の当否は「被告東京三会の自律的な判断を尊重し、これを前提として請求の当否を判断すべき」と判示する。しかし、被控訴人一弁会長は、違法な方法により(33条/弁護士道徳は日弁連の承認を経て会則とする)、反人権思想(1条/基本的人権)を懲戒権を背景に強制し(56条/秩序を害する行為として懲戒対象)、合併実現に対する会員の自律権(憲法19条21条・附則89条2項)を侵害する。組織的に自治権を濫用する事案であるから、自治権保障は及ばない。
2 鼎立を強制する行為に対する国賠請求
原判決は「附則89条1項の鼎立認容には、時間的限界があるとか裁量の範囲を逸脱するとは言えない」とする(p22)。しかし、被控訴人一弁会長は、会員の自律権を侵害して鼎立を維持しているし、すでに鼎立解消に必要な合理的期間は徒過している。また鼎立は会員の人権を侵害するから、被控訴人三会は附則89条1項の鼎立の利益を享受することはできない。
3 合併合意等義務付け請求
原判決は「合併又は解散にあたっての実体的要件も手続き的要件も定めていない」と判示する(p20)。しかし附則89条3項は裁判所管轄区域の変更(32条)を準用するから、鼎立が違法である以上(実体的要件)、その解消手続は管轄区域変更に準拠する(手続き要件)こととなる。さらに原判決は「合併の有無にかかわらず弁護士としての業務を行うことが可能」とするが、社会秩序の維持や法律制度の改善(1条2項/弁護士の使命)のためには弁護士会による活動が不可欠である。また原判決は「同志を集めて会長となる」とするが、被控訴人一弁会長は會記を強制して会員の合併の自由を束縛しているから事実上不可能である。
第1 會記思想を強制し公表する被控訴人一弁会長らとそれを黙認する被控訴人日弁連、同東弁、同二弁の各会長らに対する国賠請求
1 被控訴人一弁会長らの会員(控訴人門西並びに同村崎)に対する加害行為
(1)一弁ウエブサイトの「会則・諸規則」欄に「會記」を登載する行為
被控訴人一弁市川正司会長(令和6年度)、同佐藤彰紘会長(令和7年度)、同岡伸浩会長(令和8年度)(以下、「被控訴人一弁会長ら」という)は、会員用ウエブサイトの「会則・諸規則」欄に「會記」を掲載する(甲37-1:令和7年8月4日現在/甲45-1~4:令和8年2月16日現在/甲45-4:同8年4月2日現在)。一弁では昭和61年頃から「會記」を一弁発行の「会則・規則集」(冊子)に登載していたが(甲42-1,2/同19-1)、令和2年にウエブサイト上に移転してからは、同サイトの「会則・諸規則」欄に掲載する。被控訴人一弁会長らは、いずれも従前の例にならって會記を「会則・諸規則」欄に掲載を続けている。一弁会則では会則や会規・規則の制定改廃はウエブサイトに掲載して公示するとされているから(第6条3項/甲46)、同サイト上の会則・諸規則は、現時点で効力を有する会則・諸規則である。被控訴人一弁会長らは、ウエブサイトの会則・諸規則欄に会則や会規、規則と並べて「會記」を掲載し、會記が現在の会員の法規範と表示する。それも会則よりも上位に置いて(甲19-1,37-1,45-1)、一弁の会則・諸規則のうち最重要な規範であり、会則・諸規則の解釈や運用の指針と示している。さらに會記の全文を掲載し、そこに「最終改正日:1932年3月15日」との文言も付け加える。会則や会規はその末尾にすべて「最終改正日」の日付を表示するから(甲46末尾)、被控訴人一弁会長らは、會記の末尾にも最終改正日を表示して、会則・諸規則と同様な法規範であると示している。
一弁会員は、会員用の会則・諸規則欄によって、會記が1932年3月15日に成立して現在も効力を有する法規範と認識させられる。会員には会則遵守義務があり(法22条)、会則違反は懲戒の対象とされる(同56条:甲49-1,2)。従って、一弁会員は、會記を会則同様に遵守が義務づけられる。また会長がその監督権(法31条)によって会員が守るべき一弁の「秩序」としているから、それを「害する」と懲戒事由と該当するとされる(法56条1項)。従って、被控訴人一弁会長らが會記をウエブサイトの会則・諸規則覧に掲載する行為は、会員に対して会則ないし秩序として遵守を強制する行為である。
(2)宣誓式の開催
ア 被控訴人一弁市川正司会長は、令和6年4月の就任後から常議員会において新入会員に會記を尊重する旨の宣誓式を開催した。常議員会において被控訴人一弁市川会長は、常議員会議長とともに新入会員に対し「會記」の趣旨を説明し、新入会員に「本会創立の精神を尊重する」との内容の宣誓書を朗読させたうえ、その宣誓書に署名し押印させた(甲36-1,19-5に印鑑の用意,19-7入会申込書に宣誓書の添付が要求されている)。この一弁の宣誓式は、昭和8年に始まり、当初は告示形式であったが(甲19-2)、昭和33年に改正されて現在の方式(甲36-1)となり継続していた(甲19-4p152「今日まで実行されている」)。歴代会長や常議員議長は会報などにより宣誓式の意義を強調している(甲36-2~6:昭和60年の長野会長,平成4年の垣鍔議長,同6年の菰田会長)。そして市川会長は、令和7年1月に自身の新年あいさつと並べ、高見之雄常議員会議長の「当会では常議員会の開催にあわせて新入会員の宣誓式がおこなわれております」「当会に相応しい伝統的イベント」との記事を一弁会報に掲載し、全会員に配布して(甲47/甲36-5と同じ令和7年1月1日発行)、會記が会の規範ないし秩序として、受け継がれなければならないことを改めて会員に示した。会員は、宣誓式はこれからも継続される一弁の「伝統」行事であり、宣誓の対象とされる會記を遵守しなければならないと再認識させられた。もっとも市川会長は令和7年2月25日開催の常議員会頃から、宣誓式を中断している(甲47-3p19)。しかし中断の理由を明らかにしないまま、ウエブサイト上の「独自の制度である・・新入会員の宣誓式として今日まで連綿と継承されています」との掲載は続けていた(甲37-3)。
イ また被控訴人一弁佐藤会長は、ウエブサイト上の「新入会員の宣誓式として」の文章はそのまま掲載を続けたが(甲45-1)、令和7年4月の就任後宣誓式の開催を中断している。その理由を明らかにはしていないが、鈴木和憲常議員の「過去開催早々にはほぼ毎回行われていた常議員会の新入会員入会宣誓式がなくなった」「入会者は1回限りですが常議員は毎回会長と常議員議長の挨拶を聞かされていました」「これがなくなったことは審議の充実・時間の短縮化にも大きく寄与している」との記事を会報に掲載し(甲47-3p19)、代弁させるかたちで、審議の時間短縮のためであるかのように説明する。しかし宣誓は会則上で明記された新入会員の義務(甲46:会則17条3項)であり、その改正はなされていない。佐藤会長は宣誓式の中断について、会則との整合性や日弁連の監督によるかどうかを含めて、会員に理由を説明する責任がある。佐藤会長によって「『會記』は一弁設立の経緯ないし理念でしかない(原判決)」とはっきりとした表明がなければ、会員は会則との認識を変えることはできない。
ウ なお、鈴木議員の記事に「(宣誓式は)数年前からなくなっていたと聞いている」との記載があるが(甲47-3)、令和6年度の常議員会の議長が宣誓式を行っていると述べている(甲47-1)。本訴状送達日(令和6年12月6日)以降も、被控訴人一弁市川会長は、令和6年12月17日開催の第16回常議員会から同7年2月13日の第19回開催の常議員会まで宣誓式を行っていたと考えられる(甲47-2)。
(3)ウエブサイトに「會記」を「会員の規範」と掲載したり周年行事・会報により會記を会則又は秩序とする行為
ア 被控訴人一弁会長らは、一弁の一般向けウエブサイトに「当弁護士会創立時の伝統的精神は『第一東京弁護士会會記』として会内に掲額され」「その精神は当弁護士会会員の日常活動の規範として」「また独自の制度である常議員会における新入会員の宣誓式として」「今日まで連綿と継承されています」と表示する(甲8-2:令和6年4月16日市川会長/甲37-1,2同45--1;令和7年8月4日,同8年3月10日佐藤会長/甲45-3;同8年4月2日岡会長)。会員はこの文言によって、會記が現在においても会員の規範であり会の秩序と認識させられる。
イ また被控訴人一弁の歴代会長は、ことあるたびに會記が創立の精神であり、それを継承するのが会員の責務であると説明する。昭和46年発行の創立50年記念誌では「宣誓式は、以上のような経過をたどって生まれ、そして今日まで受け継がれている」(甲19-2p216)「昭和32年に2月に至って宣誓式の式次第は、・・新入会員にまず会長から『會記』の趣旨要領を説明する・・宣誓書には『本会創立の精神を尊重する』・・」(甲36-1p439)と掲載し、宣誓式が会の公式行事として受け継がれていることを会員に示している。また令和5年の百年史では(甲19-3)、冒頭に初代会長とその作成にかかる「會記」の写真を掲載し、會記は創立の精神としたうえ、「いま、・・宣誓式によって・・本会創立の精神を尊重するように求めている(同p4,5)」と記載したり、さらに一弁が独立を保ってきた意志の源を「會記」に求め、會記が掲げた道義的精神を結合の拠り所とすると宣言する(同p498~500)。さらに宣誓式が現在も実行されていることを賛辞する発言などを掲載した百周年外史を発行する(甲19-4p152)。歴代一弁会長は、会員に対し「會記」は会員が宣誓すべき対象であると繰り返し発表する(甲36-2~5)。こうして一弁の歴代会長は、その監督権限によって、會記は一弁の法規範もしくは秩序であるとする。被控訴人一弁会長らもその伝統をそのまま引き継いで、被控訴人門西、同村崎に會記の遵守義務を課している。
(4)懲戒を背景にした會記の強制
ア 会員には、会則を守る義務が課せられており(法22条)、会則違反はそのまま懲戒事由となる(56条1項/甲49-1,2)。「会則」には、会規や規則等の実質的意味の会則も含まれる(甲49-1)。被控訴人一弁会長らは、ウエブサイトの「会則・諸規則」に「會記」を掲載し、会員に対し會記の遵守を要求し、違反した場合には懲戒となるとする。
また被控訴人一弁会長らは、ウエブサイト上に「当弁護士会創立時の伝統的精神は『第一東京弁護士会會記』として会内に掲額され」「その精神は当弁護士会会員の日常活動の規範として」と掲載し、会員に対して會記の遵守は規範であると示し、宣誓式につき「(會記を規範とすることは)また独自の制度である常議員会における新入会員の宣誓式として」「今日まで連綿と継承されています」と掲載する。一弁会員に対して、會記の遵守は会の「秩序」であり、それを害することも懲戒の対象とする(56条:なお甲32p452では「どのような行為が秩序や信用の侵害になるのか定義ずけは困難」としている)。
イ このため會記遵守に違反する言動は、懲戒される危険がある。會記は一弁の存続を求める思想であるから、合併に言及したり、それに賛同することは、會記に反する。また會記は会員の人格の優劣を基準としているから、東弁や二弁の会員の人格を賞賛することも問題とされうる。一弁会員は東弁会員より人格が優越していると発言しなくてはならない。従って、東弁・二弁との合併を提唱することは併存思想である會記を否定することであるから、会則違反もしくは秩序を害するとして懲戒の対象となる。一弁会員は、會記の強制によって思想の自由だけでなく言論の自由もはく奪されている。
ウ さらに懲戒事由には「品位を失う非行」というさらに抽象的な事由も列挙されている(甲32p452:私生活上の非違行為も含まれる)。綱紀委員会の処分も「事案の軽重その他情状」(法58条4項)という曖昧な基準も存在する。合併を発言していると、私生活上の軽微な問題であっても、反會記思想の会員という評価が加算されて、懲戒処分相当とされたり、懲戒委員会においてことさら重い処分がなされる可能性も高くなる。反対に合併を発言しないでおけば、見過ごせない事案でも情状が良いとして懲戒から外してもらえたり軽い処分ですませてもらえる可能性がある。会員はこのような危険を肌で感じ、合併に関する発言をすることができない。控訴人門西、村崎による本訴の提起は、懲戒の危険を甘受しても、なお弁護士会としての秩序を回復しなければならないとの使命に基づいているが、そのような行動に踏み切れる会員は極めてすくない。
(5)加害行為の違法性(憲法違反と弁護士法違反)
ア 基本的人権の侵害
「會記」(甲19-7)は「己を省みずして人を責め義務を等閑にして権利を妄張し名利之れ事とし相互の融合を毀傷せんとすが如き」として会員の人格に着目して、否定すべき人格を列挙する。人格に問題ある会員が同じ組織に存在することで「剛健中正の道義的精神は衰頽して内平和を欠き外軽侮を招く」となるから、「更に一つの弁護士会を組織」すると宣言している。すなわち会員の人格に優劣をつけそれによる組織分けを要求する思想である。人格で差別する思想であるから、憲法の基本的人権思想に相いれない。また人格による分断を設立趣旨とするから、弁護士会を司法機関とする憲法の統治機構の理念にも反する。被控訴人一弁会長らは、懲戒権を背景に上記(1)乃至(4)の各加害行為によって強制加入の会員である控訴人門西、同村崎の思想信条の自由(憲法19条)、人格権(同13条)を侵害し、人格の優劣を基準に控訴人ら会員を差別する(同14条1項)。そしてその特定思想を強制して、控訴人らの言論の自由(同21条)をも侵害する。
イ 弁護士法違反
被控訴人一弁会長らは、会則・諸規則欄に「會記」を掲載したり、ウエブサイトに「その(會記)精神は当弁護士会会員の日常活動の規範」と表示して會記を会員が遵守すべき法的規範とする。しかし、弁護士法は「弁護士道徳」関しては、日弁連の承諾を得て会則としなければならないと定めている(法33条2項7号「必要的記載事項」)。會記は弁護士道徳に関する内容であるから、日弁連の承諾を得ずに法規範とすることは弁護士法違反である(法33条1項)。また新入会員に対する宣誓に関する会則17条3項は「所定の」として宣誓式の内容を特定していない。しかし会則のどこにも明記されていない「會記」を、宣誓の対象にするのであれば、日弁連の承諾が必要となる。その承諾なく、會記を宣誓させる行為は、弁護士法違反である。
さらに會記を一弁の会則・規則とするには、総会などの決議が必要である(甲46:会則47条2項)。宣誓式の「所定の」という内容も「弁護士・・の利害に関する事項」(同43条5号)として総会の審議対象となる。そして総会の決議内容は日弁連に報告しなければならない(法38条)。被控訴人一弁会長らは、かような会内手続と日弁連への報告を経ず會記を強制しているからみずからの会則にも違反する。
2 被控訴人一弁会長らが會記を公表して控訴人東弁二弁会員を侮辱する加害行為
(1)被控訴人一弁会長らは、會記を会則と並んで掲載し、現在も一弁会員が規範とすべきとして公表する。會記の「己を省みずして人を責め義務を等閑にして権利を妄張し名利之れ事とし相互の融合を毀傷せんとすが如き」会員とはその当時の東弁会員(再分裂した二弁会員を含む)を指している。他人の人格につき「己を省みずして人を責め」とか「義務を等閑にして権利を妄張し」、「名利之れ事とし相互の融合を毀傷せんとす」と評することは、その人の人格が一般的な道徳的水準から劣っており、軽視すべき人格であるという趣旨である。さらに會記では「道義的精神衰頽し内平和を欠き外軽侮を招かんとする至る」「我同志は深くこれを憂い更に一の弁護士会を組織し其の儀容を新たにして以て弁護士本来の面目を保持せんとせり」と続けているから、同じ組織にいると自分たちも軽蔑されるとも公言する。
會記は昭和7年制定であるが、被控訴人一弁会長らは、「その精神は当弁護士会会員の日常活動の規範として」「また独自の制度である常議員会における新入会員の宣誓式として」「今日まで連綿と継承されています」とした上、現在の会則・規則集として掲載し、今日もなお會記は規範と宣言する。このため、現時点でも東弁、二弁会員の人格を非難の対象としている。
被控訴人一弁会長らは、理事者室に掲額した會記を一般用サイト上に表示したり(甲8-2,45-1)、7000名を超える一弁会員(甲29)サイトの会則・規則欄に掲載し、一般にも販売する会誌にも掲載する(甲7-2/50年史:同19-3/百年史)。従って、被控訴人一弁会長らは、被控訴人神山、同齊藤、同道本、同水野ら東弁二弁会員の人格には欠点があると不特定多数の者に公表して、その人格を侮辱している。個人を特定していなくとも、小規模の特定集団を対象としているから、その集団の構成員個々人に対する侮辱行為と評価される。
(2)加害行為の違法性
他者の人格を軽蔑する内容を、公表することは、人格権の侵害である。東弁、二弁は、比較的小規模でかつ特定できる集団であるから、その構成員の個人の人格を侵害する(民法710条)。東弁、二弁の控訴人ら(神山、齊藤、道本、水野)は、人格に問題ある会員と公表されていることで人格権を侵害されている。
3 被控訴人日弁連会長、同東弁会長、同二弁会長の一弁会長との共同不法行為
(1)被控訴人日弁連渕上玲子会長(令和6,7年度)、同松田純一会長(令和8年度)(以下「被控訴人日弁連会長ら」という)は、被控訴人一弁会長らに対し、會記を現在でも規範としてウエブサイト上で宣言したり、会則集に登載したり、宣誓式を行ったりすることをやめるように指導監督する責任がある(法45条2項)。もし宣誓式を廃止したのであれば、會記はもはや規範ではないと会員に説明するように一弁会長らを指導する必要がある。また日弁連の承諾を得ずに會記を会則と並べて表示したり、会員が守るべき法的規範とするのは弁護士法に違反し、かつ被控訴人一弁の会則にも違反するとして指導する責任がある。にもかかわらずそれらすべてを懈怠した。弁護士自治の最終責任者としての責務を果たしていない。
(2)また被控訴人東弁上田智司会長(令和6年度)、同鈴木善和会長(同7年度)、同石原修会長(同8年度)(以下「被控訴人東弁会長ら」という)、二弁日下部真治会長(令和6年度)、同福島正義会長(同7年度)、同水上洋会長(同8年度)(以下「被控訴人二弁会長ら」という)は、被告一弁会長らが反人権思想を規範として一弁会員を拘束したり、その思想を公表して東弁二弁会員の人格を侮辱する行為を中止するように、監督官庁である被控訴人日弁連会長に監督権行使を求める責務がある(法31条)。にもかかわらずその責務を懈怠した。
(3)被控訴人日弁連、同東弁、同二弁の各会長らは自らの責務を懈怠して一弁会長らの人権侵害行為を黙認しているので、被控訴人一弁会長らの加害行為を共同している(国賠4条/民法719条)。
4 保護法益の侵害と損害とその額
(1)控訴人門西及び同村崎は、被控訴人一弁会長らが會記を会則等として強制する加害行為によって憲法が保障する思想信条の自由、人格権、平等権、言論の自由を侵害されている。またそれが弁護士法に違反して行われていることの精神的苦痛も加わっている。その慰謝料はひとりあたり月額1万円を下らない。
(2)東弁会員(控訴人神山、同齊藤、同水野)と二弁会員(同道本)は、人格が劣るので同席しないとの會記を被控訴人一弁会長らが公表することによって侮辱されている。その慰謝料はひとりあたり月額1万円を下らない。
(3)三会合併の期待権の侵害
ア 法附則89条2項は「前項の弁護士会は、何時でも合併又は解散することができる」と定め、弁護士会もしくはその会員が、自律権に基づいて東京三会を統合できることを明らかにし、東京三会会員に三会の統合に向けた活動の自由を保障する。附則89条2項3項は、弁護士会が私的内紛で分断したままになっているのはけっして「望ましいものではない」ので「やがて一弁護士会に統一されることを期待され」、そのために「なんらの制約もなく、いつにても合併又は解散できることを明らかにしている」のである(立法者福原忠男:甲1-1p168p320,321)。立法者(福原忠男氏)は、現行弁護士法の原則(一裁判所、一弁護士会)から三会鼎立はあるべき姿ではないこと、統一性に逸脱すること、法律自体も一つになるべきこと、三つあるという合理性は全然ないこと、新しい弁護士法によってはっきり形にしなければならないと強調する(甲3;平成4年講演会)。従って、鼎立状態(89条1項)を、合併又は解散によって本則(32条)に戻すために、会員が合併に向けた活動を行う自由は、特に弁護士法上でも明記された法的権利であり、その活動によって合併が成し遂げれた場合に会員が得られる利益は、法的に保護される利益である(期待権)。
イ 控訴人らが合併により得られる利益は次のとおりである(甲50~55/陳述書)。
(ア)合併によって、反人権思想によって鼎立した弁護士会を、人権擁護を使命(法1条)とする司法機関に改革することで、会員は弁護士としての人権・人格権を回復することができる(憲法13条14条19条)。
(イ)代表者をひとりに整えることによって、東京地裁所長、都知事などの団体や個人と対等で円滑な対話が可能となり、社会性を回復することができる。内紛を過去の歴史とすることで弁護士会の信頼回復が期待できる。
(ウ)統合によって、役員や事務職員などの人件費や、ネット環境などの事務経費などの無駄な経費が削減され、会員の会費の軽減が見込まれる。
(エ)合併によって法律相談や研修事業、人権擁護などの活動が円滑かつ迅速に展開できる。23区や都下に単一の支部を設置することができる。また他会を利用しての懲戒逃れも防止できる。
(オ)統合により併存する理事者室、会員控室などをひとつして弁護士会館の有効利用が可能となり余剰スペースを確保できその有効活用も期待できる。会館の修理修繕も円滑に実施可能である。
ウ 組織としての期待権侵害
會記は鼎立を求める思想であるから、合併を否定する。逆に合併を主張することは會記を否定することになる。一弁会員が合併を提唱したり賛同したりする活動は、それ自身が會記の精神を没却したこととなる。一弁では、會記が会則(もしくは会の秩序)とされているから、合併を提唱したり賛同することは会則違反として懲戒事由に該当する(56条1項/甲49-1,2)。従って会員にとって合併賛成と発言することは、極めて危険なこととなり、多くの会員は、合併賛同との発言を控えざるをえなくなっている。すなわち被控訴人一弁会長らは会員の合併活動の自由を抑圧している。
控訴人道本は、平成4年に東弁から一弁に移籍して、合併活動を行った。しかし一弁では會記が会則とされているため会則違反の活動を行っていると評価された。合併に賛同することは、会則違反とされる恐れがあるため、ほとんどの会員は、賛同の声をあげることができない。控訴人道本や翌平成5年に一弁会長選挙に立候補して合併を提唱した。しかし、選挙活動だからとしても会則違反の責任が問われないという保証はない(憲法15条4項「選挙人はその選択に関し公的にも私的にも責任を問われない」は適用されないし一弁会則会規には無答責の規定はない)。また選挙をはなれても合併賛成会員は会則違反のレッテルを貼られることとなる。このため鼎立候補は合併派会員を会則違反と牽制することができた。選挙の公平性はゆがめられていたのであり、控訴人道本が鼎立堅持候補に敗北した大きな原因といえる。控訴人神山は平成8年に東弁会長に立候補したが、一弁会員が合併賛成の声をあげることができない以上、合併は無理と諦める東弁会員の支持を広げることはできなかった(甲14-1~4)。令和になり控訴人道本が二弁において会長選挙に立候補したが、一弁を含めての統一でないと意味がないし、一弁会員が声をあげられないのなら合併は無理として落選している。すなわち鼎立維持が一弁の会則である以上、一弁会員が鼎立に束縛されるため、合併活動はすべて頓挫するのである。會記による一弁会員の拘束が続く以上、何度合併を掲げて立候補しても当選は見込めない。
逆に、一弁会員が會記から解放されれば、会員は合併の利益や不利益を自由に議論することができる。懲戒の危険がないなら合併に関する言論の自由が回復される。東弁、二弁会員も一弁会員が前向きなら実現可能として合併に向けた活動も展開されることとなる。合併によって会員が得られる利益は大きいし、合併は何時でも可能とされていることことからも(附則89条2項)、会員の自律的活動によって合併が実現される公算は高いといえる。
被控訴人一弁会長らの會記の強制行為によって、合併に向けた会員の自由が抑圧され、合併によって得られる会員の利益(期待権)が侵害されている。その慰謝料は控訴人ひとりあたり月額1万円をくだらない。
(4)被控訴人日弁連会長ら、同東弁会長ら、同二弁会長らは、同一弁会長らの加害項に加担しているから共同不法行為者として同額の賠償責任を連帯して負担する。
(5)控訴人らの人格権および期待権の侵害による各慰謝料の合計のうち、控訴人らは月額1万円を請求する。訴状送達の翌日(令和6年12月7日)より同8年4月7日までの16ヵ月間で合計16万円となる。よって控訴人らは被告訴人らに対して連帯して各16万円の支払いを求める。
5 弁護士会の自治権の濫用ないし逸脱
原判決は、国家賠償請求の当否は「被告東京三会の自律的な判断を尊重し、これを前提として請求の当否を判断すべき」と判示する。しかし、会員に會記の遵守を求める被控訴人一弁会長らの行為は、被控訴人日弁連の承諾を得ていないから弁護士法に違反する(33条/弁護士道徳は日弁連の承認を経て会則とする)。また自らの会則にも違反する。また會記は人格差別思想であるから、その強制や公表は、会員の人権侵害である。さらに懲戒権を背景にした加害行為でもある(56条/秩序を害する行為として懲戒対象)。被控訴人一弁会長らの加害行為は、明らかに自治権を濫用ないし逸脱している。被控訴人日弁連会長らや同東弁会長ら、同二弁会長らも黙認しているので、自律権による監督態勢が全く機能していない。弁護士会が自治権を濫用ないし逸脱して、会員の権利を直接、侵害する事案であるから(甲48)、弁護士会の自律権が尊重されてはならない。
第2 鼎立を強制する加害行為(国賠請求)
1 被控訴人一弁会長の加害行為
弁護士法は、弁護士会はその地方裁判所管轄ごとに設立しなければならないと定め、その例外を一切認めない(法32条)。他方で弁護士法はその附則において「32条にかかわらず・・なお存続させることができる」と定める(89条1項)。被控訴人四会は、この規定によって被控訴人三会は存続が許されると主張する。しかし、この規定は、違法手段によって鼎立を維持する場合まで許容するものではないし、許容期間はすでに徒過している。また鼎立の強制は会員の人権を侵害し、国際人権条約にも違反する。従って、被控訴人一弁会長は、法32条によって鼎立構造を解消する責務を負担しているがそれを懈怠している。
2 加害行為の違法性
(1)違法な鼎立継続までは許諾されない
被控訴人一弁は、會記という反人権思想を会員に強制し、それによって会員の自由意思による合併行動を制圧してきた。この行為は、それ自身が違法行為であるだけでなく、附則89条2項が定める「何時でも合併又は解散できる」との会員の期待権を侵害する。附則89条2項の権利を侵害している場合まで、附則89条1項の存続の利益は与えられない。存続の利益は、自律的な合併の保障と一体のものである。存続という期限の利益を得た当事者が、弁護士法違反の手段によって合併の自由を侵害して、存続を続けている。民法136条は、債務者が担保を滅失させたり損傷させる行為があった場合には、期限の利益を喪失すると規定する。同様に89条1項の「なお存続できる」との期限の利益を享受する本人(被控訴人一弁)が、自ら弁護士法や人権を侵害する方法によって期限を延長させている。その場合には、期限の利益を喪失するとされねばならない。被控訴人一弁を含め共同不法行為者である被控訴人四会は、法32条に違反する鼎立を附則89条1項を抗弁にすることはできない。
(2)永続的な存続まで認めていないこと
また弁護士法附則89条1項の「なお存続させることができる」との定めは、永続的な存続を許容してはいない。弁護士法によって弁護士会は旧来の親睦組織から公的な司法機関へと改組された。東京三会は、旧法下における内紛をきっかけにして、人格による分断思想によって構築された組織体である。そのような反司法秩序・反人権組織体の永続までを許容していない。附則は、新制度への移行のために必要な期間に限定しての許容でしかない。89条1項の「なお存続」とは自治権の習熟とその権限による統合に必要な期間の余裕を与えるとの趣旨である。旧弁護士法もその施行に当たり附則を置き、旧々法下の弁護士会の改組は「6ヵ月内」という期限を明示し、その間に司法大臣の認可を受けるとしていた(甲1-4:旧々法の所属弁護士が僅少の場合の特則である18条1項但書を旧法で削除した)。旧法下の弁護士会は、司法大臣の監督下にあったから(旧34条)、確定期限が明記されていたが、現行法では、弁護士会には監督官庁が存在しない自律型の運営と変更された。従って現行法に則った弁護士会への改組は、被告三会自身の行動による実現が求められ、その自治権行使によって解決することを前提にしている。このことは今後新たに地方裁判所の管轄区域が変更され、同一地域内に弁護士会が併存する場合の合併又は解散手続に関しても「何時までに」との期限が明示されてはいないことと同様である(法43条1項)。期限が明示されていないのは、無期限ではなく「自治権を行使して合併手続に必要な期間内に」との不確定期限が内在することは明らかである。現行法が昭和24年に施行されてすでに70年以上が経過する。自治権習熟とその行使による合併に必要な期間はすでに徒過しているから、附則89条1項の許容は失効している。
(3)人権侵害
また鼎立構造を会員に強制することは、会員の人権を侵害する。東京地方裁判所管轄区域の控訴人ら弁護士は、被告三会のいずれかに属しなければ弁護士業務を行えない。どの会を選択するかの自由はあるが、いずれにも所属しないという自由はない。そして一つの会に所属すると他の二会との関係は成立しない。旧法下では認められていた(旧30条但書)第四の新弁護士会を設立することも許されない。その結果、東京の弁護士たちは、被告三会が構築した「鼎立構造」に組み込まれ、強制的にその構造を構成する一員にされる。そしてその「鼎立構造」とは、「己を省みない者(東弁会員)とは同席できない」(甲7-2:「一弁會記」)という同業者への人格批判から始まり、「分裂を憂慮しての鼎立」(甲7-3:「二弁」)という不可解な論理で継承され(甲8-3)、「道理に合わない」(甲7-1:「東弁」)と批判するなかで成立した構造である。旧々法下での鼎立組織が、現憲法や現行法下においてもそのまま継続されている。加えて、付与された自治権によって、懲戒権を背景に会員に會記思想を強制し、会員の合併活動の自由を制圧して、鼎立を存続させている。控訴人らは、私的紛争に起因する鼎立構造に強制的に加入させられ、懲戒権を含む強力な権限下におかれ、その制約から脱する活動さえも支配されている。
最高裁は弁護士会同様に強制加入団体である税理士会につき、会が行った政治的献金はたとえ多数決原理によるものとしても構成員の思想信条を侵害するので無効と判旨している(甲5-1)。同様に強制加入団体である被控訴人三会が私的な鼎立秩序を強制することは、控訴人ら会員の思想信条の侵害として許されない。弁護士会は自治権能まで付与され、公益性がより顕著であるから、構成員に対する公的な運営の確保が不可欠である。
人格差別的な思想から始まった鼎立秩序を強制することは、構成員の思想信条を侵害する(憲法19条)。さらに鼎立構造への強制加入は、世界人権宣言18条(「すべての人は思想、良心及び宗教の自由に対する権利を有する」)や市民的政治的権利に関する国際条約第18条(「すべての者は思想、良心及び宗教的の自由についての権利を有する」)にも違反している。さらに、會記思想は、憲法14条が差別を禁止する「信条」による差別に該当する。そのため、東京の弁護士たちは他の弁護士会と異なり、正当とされる会長を選出することができないばかりか無駄な会費負担を押しつけられるなど他の弁護士会所属の弁護士や他の専門職(司法書士や税理士)とは異なる分断秩序の押しつけという差別的取り扱いを受けている(憲法14条1項)。現行法制定前から鼎立状態であったという理由だけで、差別的な取り扱いを認容することはできない。同様に、被控訴人三会の鼎立は、己を顧みない者とは同席できないという人格の優越性を根拠としているから、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約第4条(「締約国は・・種族的集団の優越性の思想もしくは理論に基づく・・団体を非難し、このような差別・・行為を根絶する・・措置をとることを約束する」)が禁止する種族的集団の優越性の思想に該当する。
(4)司法機関としての弁護士会
弁護士会の会長も司法機関の長である(法35条3項:公務員)。強制加入団体である弁護士会とその会員との関係には、「公務員の選定し、罷免する権利」「すべての公務員は全体の奉仕者である」との憲法保障が及ぶと解される(憲法15条1項2項)。
ところが被告三会がそれぞれ会長を選出することによって、現状では東京地方裁判所管轄区域に3名の会長が存在している。3名の会長の間では、誰が代表者となるかの規則は存在しないので、無関係に併存している。被告東弁会長の選出や罷免について被告一弁や二弁の会員は無関係であり、被告東弁の会長は東京の弁護士全体の奉仕者ではなく、単に東弁会員だけとの関係しか成立しない。すなわち東京地方裁判所所長と東京地方検察庁検事正に対応する東京の弁護士の会長は不在である。加えて、世間から見ると、被告東弁の会長を選出した会員は誰かについてもその特定は困難であり、会員名簿を確認するしかない。おまけに被告三会はその設立趣旨(会長選挙の確執からの分裂)を隠しているため、ますます各会会長の立ち位置を理解することができない。被告三会の会長は、代表者として不完全であり、また世間からは不可解な存在なのである。その結果、東京の弁護士たちにとっては、正当な代表者を選出できない。正当な代表者を選定しもしくはそれを罷免する権限を侵害されているので、憲法に定める公務員を選定する権利の侵害であり(憲法15条1項)、公務員は全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではないという規律(同2項)、普通選挙の保障(同3項)にも違反する。東京の弁護士たちは、正規の会長を通じての社会参加の途が塞がれているのである。
最高裁は、在外国民に対し、国政選挙の選挙権や最高裁判所裁判官国民審査権の行使が認められないのは憲法15条の公務員選定や罷免の権利に違反する旨の判断をしている(甲5-2,3)。そして原告ら会員においては、東京における弁護士会の代表者というべき公務員が存在しない。在外国民とは形態が異なっているものの、選挙権や罷免の権利が剥奪されている点は同じである。
(5)人権条約
また、世界人権宣言21条1項は「すべての人は直接にまたは自由に選出された代表者を通じて、自国の政治に参加する権利を有する」と定めている。また市民的政治的権利に関する国際条約第25条では、「すべての市民は、第二条に規定するいかなる差別もなく、かつ不合理な制限なしに次のことをおこなう権利及び機会を有する」として「直接に、または自由に選んだ代表者を通じて、政治に参加すること」と規定している。しかし原告らが選出する3人の会長は、一部の弁護士を代表するだけであり、世間ではその一部の弁護士が誰であるかわからない。3人の会長は意見を集約する手続も持っていない。すなわち原告ら東京の弁護士は、社会に参加する代表者をもてていない。そのため代表者を通じて政治に参加する機会を奪われている。被告三会の鼎立放置は上記人権宣言と条約にも違反している。
国連人権理事会採択の「ビジネスと人権に関する指導原則」によれば、企業はその活動を通じて人権に悪影響を引き起こすことや助長することを回避する責務がある。弁護士会は法的紛争ビジネスを独占する組織体である。にもかかわらず、差別的思想による鼎立構造を維持して人権に悪影響を及ぼし人権侵害を助長している。被告四会による被告三会鼎立放置の姿勢は、上記指導原則に違反している。人権侵害の被害者を守るべき弁護士会が、所属会員の人権侵害の加害者になっている。
3 被控訴人日弁連会長、同東弁会長、同二弁会長の一弁会長との共同不法行為
被控訴人日弁連会長らは、被控訴人一弁会長らに対し、鼎立解消の手続きをとるように指導監督する責任がある(法45条2項)。また被控訴人東弁、二弁の各会長らは、監督官庁である日弁連に監督権行使を求める責務がある(法31条)。にもかかわらず被控訴人日弁連会長ら、同東弁会長ら、同二弁会長らはその責務を懈怠している。被控訴人日弁連、同東弁、同二弁の各会長らは自らの責務を懈怠して一弁会長らの違法行為を黙認しているので、被控訴人一弁会長の加害行為を共同している(国賠4条/民法719条)。
4 保護法益と損害
反人権思想によって鼎立した弁護士会への帰属を強制されて控訴人ら会員は、弁護士としての人権・人格権を侵害されている(憲法13条14条19条)。また正規の代表者が不在のため、東京地裁所長、都知事などの団体や個人と対等な対話が困難であり、社会性を失っている。さらに内紛を現在まで引きずることで弁護士会の信頼を損ねている。
また会員は、鼎立によって、役員や事務職員などの人件費や、ネット環境などの事務経費などの無駄な経費が嵩み、無駄な会費を負担されられている。法律相談や研修事業、人権擁護などの活動が円滑に運営できず、23区や都下に単一の支部を設置することができない。また他会を利用しての懲戒逃れも防止できていない。さらに弁護士会館において3つの理事者室、会員控室が併存するため、会館の有効利用ができていない。会館の修理修繕も円滑に実施できない。
以上のような控訴人らが会員として蒙る不利益の慰謝料は、各控訴人につき月額1万円をくだらない。また逸失利益も月額6,164円を下らない。訴状送達の翌日(令和6年12月7日)より同8年4月7日までの16ヵ月間で合計16万円となる。よって控訴人らは被告訴人らに対して連帯して各16万円の慰謝料を請求する。
第3 合併合意等義務付けの訴え
1 司法審査の対象であること
(1)被控訴人一弁会長の自治権濫用
原判決は、東京三会の自治権の保障を根拠として司法審査の対象とならないと判示する。しかし、被控訴人一弁会長らは、弁護士法に反する方法により(33条/弁護士道徳は日弁連の承認を経て会則とする)、弁護士法の人権思想(1条/基本的人権)に反する特定思想(會記)を強制し(56条/秩序を害する行為として懲戒対象)、よって会員の自律権を抑圧して(31条/監督権の濫用)、合併実現に対する会員の権利(附則89条2項)を侵害する。被控訴人一弁会長らは明らかにその自治権を濫用して会員の自治権を不当に抑圧している。被控訴人日弁連会長らは、被控訴人一弁会長らの監督権濫用を指導し、監督する責任があるのに(45条2項)、それを放置し、被控訴人東弁、同二弁の各会長らは、被控訴人日弁連会長らの監督権行使を促して、被控訴人一弁会長らの濫用行為を制止する責任があるのに(法31条/改善進歩を図る義務)、それを怠っている。弁護士会が加害者であり、その会員が被害者の人権侵害事案であり、その加害行為が弁護士自治権の濫用によってなされている。にもかかわらず被告四会会長らは、反省するどころか、自らの権限濫用を治外法権と主張している。もはや合併問題に関する限り、弁護士会はその自浄能力を完全に失っているから、弁護士会の自治権は認められない。
(2)會記思想強制の制度化
會記思想を強制して、合併実現に対する会員の権利を侵害することは、被控訴人一弁の歴代会長らが行ってきたことでありそのため、被告一弁においては制度化している。こと合併問題に関する限り、被控訴人一弁は反人権・反秩序組織と言わねばならない。高度な自治権を利用して、違法な秩序を形成して維持してきた組織であるから、当然に自治権など認められない。
(3)実体的及び手続的要件の定め
弁護士会の合併又は解散については、裁判所の管轄区域変更に伴う合併又は解散について明文の規定があり(43条)、この合併又は解散について弁護士会がそれを怠った場合についての、直接の定めはないが、「解散及び清算は裁判所の監督に属する」との規定がある(法43条の9)。また会員の懲戒や登録についても最終的には裁判所が関与するとされている(法16条61条)。鼎立問題は、管轄区域変更に伴う規定が準用される(89条3項)ことからしても、鼎立が違法となっているにもかかわらず弁護士会がそれを放置して省みない場合(実体的要件)には、裁判所の監督の対象としてその解消の意思決定も43条1項の総会決議によることとなり、具体的な手続は43条2項以下の手続きが準用される。
2 原告適格
被控訴人らは、会員が弁護士会会長に総会の開催を求める権利を具体的に保護する趣旨は読みとれないとか、会則にも、個々の弁護士に総会の開催を求める権利は保障されていないと主張する。しかし、控訴人らは、会員の地位を根拠として、裁判所の監督権行使を求めている。
また、原判決は「合併の有無にかかわらず弁護士としての業務を行うことが可能」として会員の利益が害されていないと判示する。しかし、弁護士は、個々の受任案件を通じて「社会秩序の維持や法律制度の改善(1条2項)」を使命とされており、その責務を果たすには弁護士会としての組織活動が不可欠である。また原判決は「同志を集めて会長となるなど」ができるとするが、被控訴人一弁会長らは、合併に賛同することを会則や会の秩序(鼎立)を害する行為(56条1項/懲戒対象)とする。合併を実現する活動は、著しく制約されている。
3 処分性
控訴人ら会員にとって強制加入でありかつ、監督権や懲戒権を有する弁護士会は公権力行使の主体である。合併又は解散によって地方裁判所ごとの設立に正す手続きは、公権力の行使に該当し、合併又は解散によって正常なガバナンスの下で正当な代表者による活動が可能となる。総会の招集が会員の地位と形成させる処分行為に該当する。被控訴人らは、弁護士会が同業者団体の一種と反論するが、自治権まで保障された司法機関である。
4 重大な損害
前記第2の4のとおり。
5 補充性
被控訴人三会の鼎立が違法としても、合併の時期や方法について、紛糾してまとまらない可能性が高い。日弁連も三会の意見に振り回されて、監督権の行使が困難となることも十分予想される。各会がそれぞれ自律権を持ち出すことによって、紛糾して合併が実現できなくなることを防ぐために、裁判所の判決が必要である。
6 本案要件該当性について
被控訴人三会の鼎立は、前記第2の2項(1)(2)記載のとおり、もはやその許容の条件や期限が到来して無効となっているから、違法である。また控訴人らを鼎立組織に強制加入させることは、前記第2の2項(3)乃至(5)のとおり、憲法19条、14条1項、15条および憲法の統治機構に違反する。世界人権宣言21条1項や市民的及び政治的権利に関する国際規約25条にも違反するほか、国連人権理事会採択のビジネスと人権に関する指導原則にも抵触する。
第4 指導等義務付け請求
弁護士会が自治権を隠れ蓑に利用して、会員の人格・人権を侵害している事案であるから、弁護士会の自主的・自律的な判断に委ねるべきものではない。日弁連の指導・監督は、鼎立弁護士会への帰属強制から解放されるという会員の地位を形成するものである。被控訴人東京三会が自浄能力を失っていることは明らかであるから、被控訴人日弁連会長はその併存状態を解消すべき責務がある。
第5 違法確認の訴え
被控訴人三会の鼎立は、弁護士法や憲法、国際人権規約等に違反する。被控訴人三会が鼎立していることによって、控訴人らの権利侵害が継続している。弁護士会が会員の人格・人権を侵害している事案であるから、弁護士会の自主的・自律的な判断に委ねるべきものではない。弁護士法32条に違反する旨の確認判決がなされれば、同条に適合する弁護士会が組織されることになり、控訴人らは人権侵害から解放される。 (以上)

